プロジェクトの概要


背景


 ブラジル国政府はアマゾン熱帯雨林の保全を目的として、1970年代から衛星画像を活用している。2004年からは、前年の大統領令に基づき策定された「アマゾン森林減少阻止・管理計画(PPCDAM)」が13省庁の連携により開始され、ほぼリアルタイムで伐採状況を把握できる衛星モニタリングシステム(DETER)の導入、環境犯罪の取り締まり強化などが奏功し、森林伐採の減少に貢献した。衛星画像を使用した環境犯罪取締りに関しては、JICAによる協力で衛星画像を使った鑑定書作成のための技術移転等が行われ、技術者の能力向上などの成果が上がっている。
 一方、これまでの衛星画像による監視は熱帯雨林の伐採を抑制するための重要な手段であるが、光学センサーを用いている為、年間5ヶ月近くが厚い雲に覆われているアマゾン地域では、この期間地上の状況をとらえることができず、違法伐採者がこの間に作業を完遂してしまうため、その有効性に限界があった。ALOSに搭載されたPALSARではマイクロ波レーダを使用しているので雲を通して地上の状況が把握できるため、アマゾンのような被雲率の高い期間が長い地域でも有効に活用できることが期待されている。
 2007年からわが国の宇宙機関JAXAはブラジル環境・再生可能天然資源院(IBAMA)に対しALOS PALSAR画像提供を開始したがマイクロ波のレーダ画像に不慣れな「ブ国」ではその判読技術が確立しておらず有効に活用されているとは言い難い。このため「ブ」国ではALOS PALSARの判読能力向上と現有の衛星による森林モニタリングシステムにこのデータを活用する仕組みを構築することを目的とする技術協力プロジェクトをわが国に要請した。
 JICAは2008年7月に事前評価調査団を派遣し、協力の枠組みについて「ブ」国と合意2008年12月中旬に「アマゾン森林保全・違法伐採防止のためのALOS衛星画像の利用プロジェクト」にかかる討議議事録を署名交換した。本プロジェクトはこの議事録に基づき連邦警察(DPF) 及びブラジル環境・再生可能天然資源院(IBAMA)をカウンターパートとして2009年5月より3年間の予定で技術協力を実施することとなった。



概要


- 業務対象領域


 本プロジェクトの対象領域は、「ブ」国政府が定めた法定アマゾン(Legal Amazon)の森林領域であるが、主な活動はブラジリアで実施する。法定アマゾンには9州(アクレ、アマパー、アマゾナス、パラー、ロンドニア、ロライマ、トカンチンス及びマットグロッソ、マラニョンの一部)が属し、その面積は合計520万平方キロになる。(図1及び表1参照)

              図1 対象地域



 

- プロジェクトの目標と成果

本プロジェクトの目標は技術協力活動の実施を通して以下のプロジェクト目標を達成することを業務の目的とする。

(1) 上位目標
衛星を活用した違法伐採情報に基づく取り締まりが強化されること。
(2) プロジェクト目標
ALOS/PALSARから得られるアマゾンでの違法伐採に係る情報が取り締まりのために提供されること。
(3) アウトプット
ア ALOS/PALSAR画像を利用して森林伐採地及びその可能性のある場所が発見できるようになる。
イ 衛星モニタリングに置けるDPF、及びIBAMAの情報共有・情報伝達が改善される。
ウ 違法伐採の発見・判定にかかるDPF、IBAMAの人材の能力が向上する。


- 相手国関係者


(1)C/P機関:連邦警察(DPF)ならびにブラジル環境・再生可能天然資源院(IBAMA)
(2)裨益者:DPF及びIBAMAの技術者(約100名)及び現場取締官


- プロジェクトの実施場所


本プロジェクトの対象地域は「ブ」国政府が定めた法定アマゾンの森林地域であるが主な活動はブラジリアで実施する。



- 業務実施上の留意事項


 (1)C/P間の連携促進 
 プロジェクトの目標を達成するためには、連邦警察とIBAMAとの間での協力体制が構築されることが重要であり、両機関を含めた定例会合等の開催及び通常の技術移転活動を通じ両組織間の連携を促進するよう留意する。

 (2)プロジェクト成果の早期発現
 本件の協力期間は36ヶ月を予定しているが、特にALOS/PALSAR画像を利用した森林伐採地及びその可能性のある場所の発見については可能な限り早期に具体的成果を出すことが期待されており、この点に留意した上で人員を配置する。また協力期間の最後6ヶ月程度は「ブ」国側独自で全ての活動が実施され、日本側はこれに対する必要なモニタリング、すなわち「ブ」国側による活動状況が随時日本側に報告され、問題があった際にこれを解決するための助言を日本側から「ブ」国側に提供する体制を構築する。

 (3)「ブ」国側技術力の考慮
 「ブ」国側は衛星を利用した森林モニタリングシステム構築に関し、既に一定の技術力を有しているところ、C/P機関に特に不足している技術的、能力的な課題を十分に理解した上で効率的に技術支援を実施する。

 (4)ローカルリソースの活用
  「ブ」国は、リモートセンシング、ウェブプログラミング、ICTマネジメント及びGISのいずれに分野においても、高い技術力を持った人材を有していると考えられ、本プロジェクトの実施にあたってはこれらローカルリソースを積極的に活用する。特にALOS画像処理基礎・上級研修の実施にあたっては、必要な技術を有する機関との連携等によるローカルリソースの活用を積極的に図る。

 (5)人材育成
  技術協力プロジェクトにおいてはカウンターパートへの技術移転による人材育成が重要であり、連邦警察、IBAMAの両機関を中心とした人材の育成に積極的に取り組む。

 (6)セミナーの開催
  本プロジェクトにおいてはプロジェクト成果にかかる関係機関間での情報共有が重要であり、受注者は各年次少なくとも一回、C/Pと協力しプロジェクト成果を連邦警察及びIBAMA内で広く普及するための、セミナーを開催する。またプロジェクト開始当初にもプロジェクトの紹介を目的としたセミナーを開催する。

 (7)相手国の予算措置への働きかけ
  「ブ」国側が本事業にかかる必要な予算及び人員を確保するように、連邦警察及びIBAMAに対し必要な働きかけを行う。

 (8)会議への出席
ア 合同調整委員会((JCC: Joint Coordinating Committee)
イ プロジェクト事業進捗報告書ならびに今後の実施方針・計画の検討に関する
  会議(プロジェクト事業進捗報告書提出時)
ウ プロジェクト業務完了報告書に基づく進捗報告ならびに次年度実施方針・
  計画の検討に関する会議(プロジェクト業務完了報告書提出時)
エ プロジェクト事業完了報告書に基づくプロジェクト活動報告に関する会議(プロジェクト事業完了報告書提出時)
オ 重要事項等の検討のために必要に応じて開催されるその他会議(国内での会
  議を含む)

 (9)合同調整委員会の開催
第1年次については活動開始当初と第1年次末に開催する。第二年次以降は年次末及び必要に応じ中間レビュー、終了時評価の実施時等に開催する。年次末の合同調整委員会においては当該年次の活動結果の報告をおこなうとともに、翌年次の活動計画についてもあわせて説明し、関係者の承認を得ることとする。

 (10)広報活動
業務実施にあたっては、本協力の意義、活動内容とその成果を「ブ」国・日本両国の国民各層に正確に理解してもらえるよう、C/P機関と共同でプロジェクトホームページ(葡分・和文)の作成、機構ブラジル事務所への情報提供、中央・地方においての「ブ」国側メディアへの情報提供、プロジェクト関係者への情報提供等、効果的な情報発信・広報活動に勤める。

 (11)相手機関とのプロジェクトの共同運営
プロジェクトの運営においては、PDM及びPOに沿った「ブ」国側との共同作業を基本とする。2008年12月に署名されたミニッツ(M/M)にて、協力開始前の時点におけるPDMについて「ブ」国側と合意しているが、これについてプロジェクト開始後6ヶ月を経た時点で、それまでの活動を踏まえ第一回目の改訂案を提案し、必要な調整を行う。またPOについては現時点でその大枠は整理されているが、これを基にプロジェクト開始時において詳細POを策定し、「ブ」国側と合意する。なお、協力期間を通じPDMの改訂が必要となるような事態が発生した場合には、速やかに機構に連絡し、PDM改訂に向けて提案・調整・協力する。またPOについても十分に関係者と情報を共有した上で、適宜その改訂を行う。

 (12)プロジェクト評価への協力
本プロジェクトについては第二年次に中間レビュー調査、第三年次に終了時評価調査の実施を予定しているが、受注者はPDMに定められた指標データ及び投入・活動実績の入手・整理、「ブ」国側との諸調整等、評価調査実施に必要な支援を行うこととする。